【18】 解答を人質にとった授業

 今回は高校の数学の授業の内容についてちょっとお伝えしたいと思います。

 数研出版の『オリジナル』という問題集をご存知でしょうか。この問題集は主に前年度の入試に出題された問題をあつめたもので、進学校の数学の傍用の問題集として使われることが多い問題集です。この問題集の特徴は解答が略解しかなくて、最終的な答えしか本体には出ていません。詳細解答に関しては、別冊で出版されています。

 問題は、この問題集の使い方です。多くの高校においては、問題集だけを渡して、定期テスト前にどこまでの範囲をレポート提出だとか、どこまでの範囲を定期テストの範囲に入れてくるようになっています。当然のことながら、現役生に入試レベルの問題は、すぐには解答できませんので、かなり苦労するわけです。そこで、授業で詳細解答を使って、解答解説をするというわけです。

 生徒はいわば受動的に、その解答を見て理解してノートに書き留めることでしょう。その瞬間「先生はすごい!」っていうところになるのでしょうか?もちろんすべてのテスト範囲の問題を解答解説できないので、あとは自分で解いてこいということになるでしょう。ところが、入試問題の塊ですから、当然自力でできるはずがありません。そこで補習をしてあげましょうという事になるわけです。そうすると、またそこで「先生はなんて親切ですごいんだ」ってことになりますか・・・

  一見するとあたかも効率のよい授業のように見えますが、果たして本当にそうでしょうか?ほんとうにその先生ってすごいですか

 ではこうしたらどうでしょうか。詳細解答の冊子を生徒に渡すとしたらどうでしょうか。そうです。その瞬間にここまでの先生の存在意義がなくなります。入試問題に取り組もうという生徒たちですから、詳細解答を読んで理解することができるでしょう。

 そんなことをしたら先生のやることが無くなる!って怒られてしまいますかね。そもそも生徒が自分で読んで理解できる内容なら、わざわざ先生が教えてあげる必要はないのではないでしょうか・・・

 では、先生は何をするのかって聞かれるでしょうか?

 そこが先生の腕の見せ所です。模範解答は生徒が自分で理解できるのだから、それ以上の解答を模索し、提示する必要があるのではないでしょうか。もちろん別解がなかったとしても、模範解答のポイントを解説して、要点の汎用性を上げることも重要かと思います。

 また逆に、先生も詳細解答なしで解答解説に臨んでみるのはいかがでしょうか・・・「そんなことしたら正解にたどり着く自信がない」「先生としての立場が危うくなる」とか言われますか・・・実際に先生は万能である必要は果たしてあるでしょうか?生徒が到底思いつかないような模範解答を、鼻高々と解答解説するよりも、生徒と一緒になって、悩んで苦労して答えに到達することのほうがはるかに生徒との距離を近づけるのではないでしょうか・・・

 うちの塾長曰く

 「解答を人質にした授業など、生徒のための授業じゃない」

 そのような授業が実際に展開せれております。ほんとうの数学の授業はそうではないと思うのです。たしかに、社会にでれば、答えのない問題ばかりと向き合わなくてはなりません。そんな苦闘を繰り広げていくためにも、生徒とともに悩み考えていくってことも大事なのではないでしょうか・・・