【7】 センター試験の数学

 前回とその前で数学は過程が大事で、それを評価すべきだという話をしてきました。そのためマークシートには不向きであることは決定的な問題です。とはいえ、センター試験から数学を外すわけにはいかないですし、センター試験の受験生の数を考えると、当然採点するのはマークシートでなければ処理できないことは確かでしょう。ですから、現在の形になっているといえます。

 つまりセンター試験では一応過程を考えるために、穴埋めのような数式の展開になるわけです。二次関数なら、まずは頂点の座標を求めましょう。次に判別式から、解の数について考察しましょうといった感じです。

 穴埋めだから簡単だろう?って思われるかもしれません。ところが、むしろそれが難しいのです。なぜでしょうか。

 数学は最初に問題をみて、自分なりに流れを思い浮かべて数式を変形していくわけですが、そこの重要なポイントは『自分なりに』というところです。つまり、自分ならこうやって解答を進めるといった流れです。

 ところが、センターは『自分なり』を許さず、出題者側のやり方で解くように矯正されてしまうわけです。したがって、その数式の展開や話の流れがわからないと、何を目的としているのかわからず、なかなか波に乗れずに答えがわからないということが多々あります。

 いわば、‘人の褌で相撲をとる’っといった感じが抜けきれず、解いていてもそれでいいのか常に違和感を感じながら、私自身も解いている事があります。

 マークシートで数学を解くというのは、出題者の解き方を推理していくまた違った数学になっているわけです。まあそれが数学といっていいのかどうかはわかりませんが・・・

 そんな変な数学だからこそ、姑息な手段で解答を求めようとする輩がいます。それが先日もお伝えした三角関数の場合ルートの中は、2か3とかいったことを教えるテキストです。これは明らかに数学ではなくなっています。数学を使った推理小説みたいな感じで、私としては、そのやり方は絶対に数学ではないと断言します。

 いずれにしてもマークシートの数学は、とても難しくなる傾向があることをわすれてはなりません。それよりも、本当の数学、数学の本質を理解して勉強していってほしいと思います。

 さて、次回は、「考えなくなった大学生たち」についてお伝えします。

【6】 マークシートだから簡単?

 よく私立などを受験する生徒がいう言葉に

『マークシートなのでそこまで勉強しなくても大丈夫だと思います。』

という生徒がいます。いやはやなんとも・・・

 そもそもマークシートで解答を求める目的は、採点を効率よく短時間に行うために取り入れられています。いかにも効率重視の世の中が考えた採点方法です。それによって、数学などの本質的な実力を図ることは、犠牲にされてしまったわけです。

 マークシートだと、答えを選択するので楽だと考えがちです。答えは必ず選択肢の中にある・・・確かに、その答えは半分は正解だといえます。それこそ国語や英語、社会であれば、そういえるかもしれません。ただし数学はそうはいかないわけです。

 それでも数学も、答えが穴埋めだたったり、分数だったりすることがヒントになるとかいわれるでしょうか?たしかに、ある程度はヒントになりますが、それって本当の数学なのでしょうか?

 たとえば、三角関数の問題で、解答の形のなかでルートの中に入る数字を求める場合、たいていは「2」か「3」だとか、答えの空欄の並びから答えを絞り込んだりすることを教えるテキストがあります。

 そんな解答を教えるテキストからは、絶対に学んではいけません。それは明らかに、数学ではなくなっているからです。

 さらにマークシートの恐ろしさを一つ上げると、計算が最後の最後までできていないと正解できないということです。

 先ほど考えた安易に数学を考えている生徒は、数学を苦手としているので、計算力が伴っていません。したがって、計算ミスを連発します。99%あっていたとしても、最後の「移行」や「約分」などでミスをすると、「全くできていない」と判断されてしまうのです。

 たとえば、計算してきて答えが「2の3乗」ということがわかっても、ここで2の3乗は、「8」なのに、誤って2×3と考えて「6」にマークしたりします。どんなにできているとはいっても、マークシートは情け容赦なく「できていない」と判断します。完全完ぺきな解答でないと得点できません。

 つまりマークシートは、結果でしか判断しないのです。過程を大事にする数学において、マークシートはかなり厄介な解答方法なのです。ほんと恐ろしく感じるのですが、それでも『マークシートだから簡単だ』とまだ思われますか?

 

 「それでもセンター試験で採用されているじゃないか。あれはどうしてなのか」

 たしかにセンター試験の数学はマークシートですね。それについては次回お伝えしたいと思います。